夏休みとツノウサギのジャッカたち


夏休み。僕はお姉ちゃんとジャッカさんとみんなとで、ちょっと遠出の旅行に出かけました。

そこはとっても暖かいところで、綺麗な海があります。

僕らの街とはちょっと違って、カラッとした暑さでした。


僕らの街には河や湖がありますけれど、実際に海を見るのはそういえば初めてです。

テレビや本で観る海は広くて賑やかでした。

実際の海はもっと広くって、賑やかな所ばかりでもないみたいでした。

楽しいのに、わくわくするのに、ちょっとだけ、ふわふわとして落ち着かない気持ちがありました。


ジャッカさんは年中元気です。

けれども夏は特にです。

そして早速ごっこが始まります。


僕らはジャッカさんのアイデアで、広い海でも心が独りにならないように、身体に『ツノウサギマーク』を描きました。


ジャッカさん曰く、「ボクはいつもここにいるです!」


額にはゴーグル。三人で作ったカブトムシマント。それにお馴染み、ニンジンソードを掲げてジャッカさんは走ります。

お姉ちゃんはずっと一緒です。しっかりと手をつないで。


ジャッカさんは日が暮れるまで海を遊び尽くしていました。

むしろまだまだ遊び足りないみたいです。

僕はあんまり泳げないけれど、皆と楽しく遊べました。

時間はどんどん経って、帰る頃にはツノウサギマークはみんなすっかり消えちゃってました。


実際の海はもっと広くって、賑やかなところばかりでもないみたいでした。

楽しいのに、わくわくするのに、ちょっとだけ、ふわふわとして落ち着かない気持ちがありました。

時間はどんどん経って、帰る頃にはツノウサギマークはみんなすっかり消えちゃってました。


けれど・・・



『来年もまた、みんなでこの海へ来て、僕はきっとこうして帰って行くんだろうな。今の僕と全く同じに、満ち足りた気持ちで。』


そんな事を考えながら、僕は帰りの列車に揺られます。

みんなが眠る中、一すじの暖かい涙が、僕の頬を伝いました。



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