空っぽ
金華省で見つかった謎の頭空っぽパンダ。
目の黒いのは模様じゃなくてポカンと空いた穴。
全く何を考えているのか分からない。
(一説には何も考えてない。)
普段全く動かないが、笹を手渡しすると、一応食べる。
しかし、それ以上には動く気配もやる気も感じられない。
学者の間では、「もうこれいっそ植物なんじゃないの説」を唱えるものもいた。
(続く)
マスメディアは彼をエンプティヘッドと名づけ、大きく取り上げた。
その奇妙な姿と、パンダというただでさえ人気のある動物に似ていたため話題になり、
エンプティヘッドとは全く関係のない人間がグッズを作り儲けた。
だがそのブームも一時的なものだった。
元々人気の出た事に何の理由もないのだから当然だ。
学者の間では未だに研究は続いているが、人々の記憶からはほぼ完全に消えてしまったと言っていいだろう。
全く、毎回人間の飽きっぽさには本当に呆れさせられる。
俺は一度、隣の檻のエンプティヘッドに聞いてみたことがある。
「チヤホヤされなくなって寂しくないのか。」
アイツは何も応えなかった。何も思っちゃいないんだ。
俺の場合は耐えられなかった。寂しくて寂しくて哀しくて不安だった。精神的な弱さのせいとかじゃない。俺は人間が好きだったから。
〜以上、動物園のある動物の日記より、エンプティヘッドに関する記述を抜粋〜
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